自然権思想
立憲的意味の憲法のルーツは、西欧中世に遡る。絶対王政期にあっても、国王といえども従わなければならない根本法があると考えられており、この観念が近代的(立憲的)意味の憲法に引き継がれる。
もっとも、中世の根本法の観念は、封建制下のものであったため、国王に対する貴族の特権の擁護を内容とするものであった。この封建的性格の強い観念を広く国民の権利・自由の保障とそのための統治の基本原則を内容とする近代的憲法へと昇華させるのに必要であったものが、ロックやルソーなどの説いた自然権思想である。
自然権思想は、①人間は生まれながらにして自由かつ平等であり、生来の権利(自然権)を持っている、②その自然権を確実なものとするために人民同士が社会契約を結び政府に権力の行使を委任する(契約による政府)、そして、③政府が権力を恣意的に行使して国民の権利を不当に制限する場合には、国民は政府に抵抗する権利がある(抵抗権)、という内容のものである。
この自然権思想に支えられて、アメリカ合衆国憲法(1788年)やフランス人権宣言(1789年)などが制定された。現在の日本国憲法も自然権思想に支えられたものである。
【参照・引用】
芦部信喜著・高橋和之補訂・憲法[第6版](岩波書店・2015)P5~6