車庫証明の正しい理解(1) 申請手続の機序
2つの申請
車庫証明申請(自動車保管場所証明申請)と一口に言いますが、この申請には、
①自動車保管場所証明書の交付申請と、
②保管場所標章の交付申請の
2つの申請が含まれているのです。
※ここでは、警察署の窓口申請を念頭に置いています。電子通知申請については別で説明します。
法令に合致した手続の機序
※お断り:以下では、自動車の保管場所の確保等に関する法律を「法」、自動車の保管場所の確保等に関する法律施行令を「令」、自動車の保管場所の確保等に関する法律施行規則を「則」と表記します。
厳密に2つの申請の手続機序を説明します。
まず、自動車の保有者は、①の申請を自動車保管場所証明申請書(原則2通)を保管場所の位置を管轄する警察署長に提出することでを行います(法4条1項柱書、令2条1項、則1条)。
すると、内容調査した上で警察署長が保管場所証明書を自動車の保有者に対して交付することになります。この時、警察署長は同証明書の交付と同時に、保管場所標章の交付をしなければなりません(法6条1項)。もっとも、同標章を交付する際、警察署長はその交付を求める保有者に対して、保管場所標章交付申請書(原則2通)の提出を求めなければなりません(則4条1項、則1条1項、則4条3項)。
この段階で、つまり警察署長が保管場所証明書の交付を決定した時(保管場所証明書を交付した時としもよいでしょう)、自動車の保有者は、②の保管場所標章の交付申請を保管場所標章交付申請書(原則2通)を保管場所の位置を管轄する警察署長に提出することでを行うことになるのです(法6条1項、則4条1項、則1条1項、則4条3項)。
②の申請書の提出の結果、警察署長より保管場所証明書と保管場所標章および保管場所標章番号通知書(則4条2項、同条3項)が保有者に対して交付されることになるのです。
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2.警察署長による内容審査
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3.警察署長が保管場所証明書の交付を決定
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4.保有者による保管場所標章の交付申請(2回目の申請②)
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5.警察署長から保有者への保管場所証明書と保管場所標章・保管場所標章番号通知書の交付
実務の現状は手続違背が多い
現在、警察署の窓口申請では、複写式の用紙を使っていることも多く、保有者が一度に①の証明書交付申請と②の標章交付申請を行っていますが、厳密に言えば法令に定められた手続に違反しているのです。もっとも、ほとんどの警察署では、1度目の訪問時には①の手数料分の収入証紙を申請書に貼付するよう求め、2度目の訪問時に②の手数料分の収入証紙を申請書に貼付するよう求めていますので、一応の区分はなされており手続違背の程度は軽微なものといえるでしょう。
正しい申請方法
ですから、1度目の警察署訪問時には、まず複写式の用紙の自動車保管場所証明申請書の用紙だけを切り離して提出し証明書交付申請を行い、2度目の警察署への訪問時に、残りの保管場所標章交付申請書を提出し標章交付申請を行うことが法令に合致する手続方法になります。
届出との比較
ちなみに、軽自動車の保管場所届出において、警察署への訪問が1回で済むのは、届出に対する証明書の交付がないためです。
軽自動車の届出の場合にも、証明書申請の場合と同様に保管場所標章の交付申請(則4条1項)をし、同標章の交付を受ける(法6条1項)必要があります。
しかし、標章交付のタイミングが、申請の場合には前述したように「警察署長が保管場所証明書を交付した時」であるのに対し、届出の場合には「警察署長が届出を受理した時」(法6条1項)となっているのです。
すなわち、届出の場合には、保管場所証明書の交付が予定されていないので、申請に置き替えると1回目の申請に当たる保管場所届出書提出の段階で標章が交付されるので、届出と同時に標章交付申請を行えばよく、結局のところ警察署への1回の訪問で事足りるということになるのです。
ローカル・ルールの是正は必須
実務の現状で、申請者に不利益となることはないと思いますが、手続を代行又は代理して申請することを仕事としている行政書士は、少なくともこの機序は頭に入れておくべきです。
先日、他県に申請に訪れた際に、1度目の訪問時に、保管場所標章の交付申請分の収入証紙までも申請書に貼付するように指示されました。仮に、現地調査の結果証明書が発行されなかった場合、この証紙分の手数料も申請者に負担させるつもりなのでしょうか。このようなローカル・ルールも存在しているので、法令適合性には注意する必要があります。