民主主義とは何か
民主主義とは、自分たちのことを自分たちで決めることです。
X国の国民が、Aさん1人だけだったとします。この国の政治についてAさんが決めれば、自分(たち)のことを自分(たち)で決めているので、それは民主主義でしょう。
Y国の国民が、AさんとBさんだけだったとします。この国の政治についてAさんとBさんは話し合って決めています。これも自分たちのことは自分たちで決めているので民主主義でしょう。
Z国の国民が、AさんとBさんとCさんだけだったとします。この国の政治についてAさんとBさんとCさんは話し合って決めていました。これも自分たちのことは自分たちで決めているので民主主義でしょう。
しかし、Z国ではある時期からBさんが農園を造りCさんがそれを手伝うようになりました。Aさんは以前から木の実を採って暮らしています。この時期からZ国の政治は多数決制に移行します。BさんとCさんは森を開拓し農園をどんどん広げたいという意向で一致しているので、森を守ろうとするAさんがうっとうしくなり、話し合いをもたずに全て多数決で決めてしまうことにしたのです。これを民主主義と呼べるでしょうか。たしかに多数決にはAさんも加わっています。したがって、自分たちのことは自分たちで決めていると言えなくもありません。しかし話し合いがもたれていないためAさんの意向はまるで反映されず、Aさんにとっては自分のことをあなたたちが決めていることになります。これは民主主義ではありません。
ここでもう一度、民主主義とはなにかを確認してみます。民主主義とは、自分たちのことを自分たちで決めることです。これを「自分(たち)のことを自分(たち)で決めること」と書くと分かるように、民主主義は「自分のことを自分で決めること」を含んでいます。自分のことを自分で決めること、それはつまり自由主義です。民主主義は自由主義を包摂しているのです。
先の例で、ある時期からZ国の政治が民主主義と呼べなくなったのは、Aさんの自由、つまり自由主義を排除してしまったからです。どうしてそういう結果になったのか。それは、話し合いをやめて多数決を採用したからです。もうお分かりだと思いますが、多数決は民主主義ではありません。話し合いが民主主義の本質なのです。