憲法の目的
憲法の目的を、国家体制を整備するために国民を規律すること、などと誤解している方が少なくないようです。それは間違いです。
憲法は、個人(国民)の尊厳が保たれるように、国家組織をデザインして権力を授けると同時に、その権力を制限して個人の自由を保障しています。
個人が尊重される社会を形成する目的で国家組織に権力を授けますが、その権力が濫用されて個人の自由が侵害されないようにしているわけです。
このように、憲法の目的は、社会において個人の尊厳と自由を保つことなのです。
そして、憲法典という文書の性格は、個人が国家権力の担い手に対して突きつけた命令書のようなものですから、国家権力を拘束するのみで個人を拘束しません。このことは、憲法の目的にも整合します。
したがって、憲法の目的や憲法典の性格に照らせば、国民に対して義務を付加するような規定は憲法にとって不要なものです。そのような条項を憲法典に加えたとしても法的な意味はなく、無視してもよい存在です。
ところで、日本国憲法第99条は憲法を尊重し擁護する義務を定めています。その名宛人が「天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」となっており、そこに国民が入っていないことは、上述したことの証左なのです。
憲法は、あなたが、あなたらしく、自由に生きるためにあるものなのです。