憲法の定義
憲法とは何かをを定義する場合、教科書的には次のように説明されている。すなわち、形式的な面だけに着目して定義づける場合と、内容という実質的側面に着目して定義づける場合である。
形式的意味の憲法-①
1つ目は、憲法という名前で呼ばれる成文の法典が憲法であると説明するものである。これを形式的意味の憲法という。この説明は、法典の内容には着目せずに、憲法と呼ばれる成文法典が憲法だとするもので、特に意義のある説明ではない。
実質的意味の憲法
憲法とは何かを説明するには、形式ではなく法の内容に着目し、特定の内容を持った法を憲法と説明すべきである。このように説明される憲法を実質的意味の憲法という。この意味の憲法は、内容に着目しているので、呼び名や成文の法典の有無とは関係が無い。実質的意味の憲法には、説明する方向性の違いから次の2つのものがある。
固有の意味の憲法-②
1つ目は、国家の統治の基本を定めた法を憲法と説明するもので、これを固有の意味の憲法という。これは憲法の統治機構規定に着目したもので、どのような体制の国家であっても、固有の意味の憲法は存在する。この意味で憲法をイメージしている人が多いように思われる。
立憲的意味の憲法-③
2つ目は、自由主義に基づいて定められた国家の基礎法、すなわち国家権力を制限して国民の権利・自由を擁護することを目的とする法を憲法と説明するもので、これを立憲的意味の憲法ないし近代的意味の憲法という。これは憲法の人権保障という目的に着目したもので、憲法の最も優れた特徴を表すものである。
憲法とは何かと問われた場合、憲法の最も優れた特徴を表す立憲的意味を欠いて説明してはならない。憲法の説明を固有の意味で止めてしまえば、憲法の正しい理解は困難となる。憲法が国家統治の基本を定めているのは、国民の人権保障という目的の手段にすぎないのである。
【参照・引用】
芦部信喜著・高橋和之補訂・憲法[第6版](岩波書店・2015)P4~5