行政書士とは
行政書士とは、「官公署に提出する書類、権利義務に関する書類、事実証明に関する書類を作成することにより、個人の権利・自由の実現を支援し、ひいては公正かつ公平な社会の実現に努める者」(行政書士法第1条、同第1条の2,同第1条の3参照)です。
端的に言えば、「個人の権利・自由実現のための代書人」です。
上段の長めの定義では「〜書類を作成することにより」の部分、下段の端的な定義では「代書」の部分が、行政書士固有の手段性を表しています。
そして、その書類作成という手段を通じて、個人の権利・自由の実現、公正・公平な社会の実現という目的の達成に努める者が行政書士なのです。
同じ目的の実現に努める者として、主に法律事件を扱う弁護士や、登記事務を扱う司法書士がいます。簡単に言えば、弁護士は裁判手続を手段として、司法書士は登記手続を手段として、個人の権利・義務の実現、公正・公平な社会の実現という目的の達成に努めているのです。
行政書士が手段とする「官公署に提出する書類の作成」では、許認可申請書類の作成が代表的なものです。そこで、この部分から、シンボリックに、裁判は弁護士、登記は司法書士、許認可は行政書士と表現できます。
一方で、残余の「権利義務・事実証明に関する書類の作成」については、他2士業が手段とする部分と大きく重複しており混迷する部分です。もっとも、この部分は、3士業者が関与する事案の成熟性の違いによって、シンボリックな区分が可能です。
弁護士は事案が紛争性を帯びた段階、司法書士は登記という権利保存段階という、いわば事案が成熟した段階で関与することが本来的には予定されていますが、行政書士にそのような予定はありません。これを相対的に見れば、行政書士の事案への関与時期は、事案発生初期の未熟な段階に予定されていると言いうことができます。
そうだとすると、行政書士には、事案が紛争に至らぬように対処し、あるいは仮に将来的に紛争が生じてしまった場合でも、依頼者の立証活動が容易になるよう事実を整理し、または将来の登記手続が円滑に行えるよう証拠書類を準備するといったことが要求されていると考えられます。
そこで、シンボリックに、紛争は弁護士、保存は司法書士、予防は行政書士と表現できます。
また、法律事案の間口で活動している行政書士には、相談者と他士業者との架け橋的な役割、いわばコーディネーターとしての役割が期待されます。
事案の早い段階から行政書士を関与させ、適正な法律書面を作成し、同時に適確な事実記録を行うことは、法的紛争の予防につながり、また仮に紛争が発生した場合の立証活動の容易性につながります。
特に、早い段階からの事実の記録は、権利・自由を実現する上で肝要です。法的紛争における優劣は、生じた事実の立証の可否によるところが大きいからです。
以上の点で、行政書士は良きツールとなることでしょう。