法定相続情報一覧図の原本還付の方法について
相続登記申請時に、法定相続情報一覧図を証明書類として添付した場合において、その一覧図の原本を返却してもらう方法について述べます。
平成29年4月17日法務省民二第292号
タイトル名通達の第2の2に「なお,申請人から添付した一覧図の写しの原本還付の請求があった場合は,規則第55条の規定により原本を還付することができる。この場合に,いわゆる相続関係説明図が提出されたときは,当該相続関係説明図を一覧図の写しの謄本として取り扱い,一覧図の写しについては還付することとして差し支えない。」とあります。2文目初頭に「この場合に」とあるのは、「申請人から添付した一覧図の写しの原本還付の請求があった場合に」と読むのが適当なので、一覧図の原本を返却してもらう方法は、2通りあることになります。結局は、戸籍謄本等の場合と同じということになります。戸籍謄本等の代替が一覧図ですので、当然なのでしょう。以下、2通りの方法を確認します。
① 原本還付の手続による法定相続情報一覧図原本の返却
まずは、不動産登記規則第55条に基づく原本還付の手続による場合です。すなわち、一覧図の原本とは別に、原本証明を付した一覧図のコピーを添付して登記申請をすれば、一覧図の原本が返却されます。
② 相続関係説明図の添付による一覧図原本の返却
原本還付の手続によらず(原本証明を付した一覧図のコピーを添付せず)とも、相続関係説明図を添付して登記申請すれば、一覧図の原本が返却されます。
どちらの方法によるべきか
法定相続情報証明制度開始前に、②の方法による原本返却が認められていた趣旨は、「申請人の負担の軽減及び登記事務の能率的処理を図ること」でした。しかしながら、法定相続情報証明制度の出現により、戸籍の束の提出の代わりに法定相続情報一覧図1枚を提出することで足りることとなったので、申請人の負担の軽減という趣旨は当たらなくなりました。なぜならば、相続関係説明図を別途作成するよりも、法定相続情報一覧図のコピーに原本証明を付する方が申請人の負担が少ないからです。もっとも、相続関係説明図は法定相続情報一覧図よりも掲載情報が多いため、「登記事務の能率的処理を図ること」という趣旨は未だ残ることとなります。したがって、上記した①と②のどちらの方法が望ましいかと問われれば、申請人にとっては①の方法であり、登記事務担当者にとっては②の方法である、という回答になります。
2つの方法を併用したならばどうなるか
それならばということで、2つの方法を併用してみました。すなわち、法定相続情報一覧図のコピーに原本証明を付したものを添付しつつ、相続関係説明図もまた添付して、登記申請をしてみたました(※業務性はありません。)。するとです、法定相続情報一覧図の原本とともに相続関係説明図が返却されてきました。すなわち、①の方法に基づき原本が返却されたのです。しかしこれでは、「申請人の負担の軽減」という趣旨だけでなく、「登記事務の能率的処理を図ること」という趣旨も消えてしまう(一覧図よりも情報量の多い相続関係説明図を受領する場合よりも少なくなってしまう)ことになってしまいます。
どう扱われるべきなのか
上記した登記所の対応が間違っているというわけではありませんが、せっかく①の趣旨に反してまで(手間暇かけて)申請者が相続関係説明図を作成して登記申請書に添付したのですから、それを法定相続情報一覧図の謄本として扱うべきだと考えますが、いかがでしょうか。先の通達文言からは、そのように取り扱われるべきだろうと感じます。