自動車取得税・自動車税の申告手続の法令上の根拠と問題点
自動車登録申請や自動車検査証記入申請の際に必要となる自動車取得税・自動車税の申告手続の法令上の根拠について、当事務所がある福島県福島市の場合を例に説明します。
自動車取得税(都道府県税)の徴収方法の法令上の根拠
自動車取得税の徴収方法に関しては、自動車・軽自動車共に地方税法121条により、申告納付の方法によることと規定されている。
※申告納付:納税者がその納付すべき地方税の課税標準額及び税額を申告し、及びその申告した税金を納付すること(地方税法1条1項8号)。
そして、地方税法122条は自動車税の納税義務者の義務を規定している。
それによると、申告納付の方法は、「総務省令で定める様式」に則り、自動車取得税の課税標準額及び税額その他必要な事項を記載した申告書を(都)道府県知事に提出するとともに、その申告した税額を当該(都)道府県に納付するとされている。
これを受け、地方税法施行規則8条の15において、「総務省令で定める様式」が、第16号の9様式(申告書の様式)と定められている。
加えて、直近では、地方税法施行規則の一部を改正する省令(平成27年総務省令第38号)により第16号の9様式の改定がなされており、これが現行の申告書の様式となっている。
また、福島県税条例49条において、自動車取得税の申告納付について言及があり、地方税法施行規則8条の15に規定する申告書を知事に提出せよと定められている。
自動車税(都道府県税)の徴収方法の法令上の根拠
まず、地方税法145条により、自動車税と軽自動車税が区分されている。
自動車税の徴収方法に関しては、地方税法151条1項により、原則として普通徴収の方法によることと規定されている。
※普通徴収:徴税吏員が納税通知書を当該納税者に交付することによって地方税を徴収すること(地方税法1条1項7号)。
そして、地方税法152条1項は自動車税の納税義務者の義務を規定している。それによると、自動車税の納税義務者は、道路運送車両法第7条(新規登録) 、第12条(変更登録)又は第13条(移転登録)の規定による登録の申請をした際その他当該道府県の条例の定める場合においては、「総務省令で定める様式」に則り、自動車税の賦課徴収に関し必要な事項を記載した申告書又は報告書を(都)道府県知事に提出することとされている。
これを受け、地方税法施行規則9条の2において、その様式が、第16号の9様式と定められている。 加えて、直近では、地方税法施行規則の一部を改正する省令(平成27年総務省令第38号)により第16号の9様式の改定がなされており、これが現行の申告書の様式となっている。
軽自動車税(市町村税)の徴収方法の法令上の根拠
軽自動車税の徴収方法に関しては、地方税法446条1項により、原則として普通徴収の方法によることと規定されている。
また、福島市税条例72条の3においても、軽自動車税の徴収方法に関して言及があり、地方税法と同様に、原則として普通徴収の方法によることと規定されている。
そして、地方税法447条1項は自動車税の納税義務者の義務を規定している。それによると、軽自動車税の納税義務者は、当該市町村の条例の定めるところにより、「総務省令で定める様式」に則り、軽自動車税の賦課徴収に関し必要な事項を記載した申告書又は報告書を市町村長に提出することとされている。
これを受け、自動車税の納税義務者の義務の具体的内容について、福島市税条例74条が規定している。それによると、軽自動車税の納税義務者である軽自動車等の所有者又は使用者は、軽自動車等の所有者等となった日から15日以内に、施行規則第33号の4様式による申告書を市長に提出することとされている。
また、地方税法施行規則16条において、「総務省令で定める様式」が、第33号の4様式と定められている。
加えて、直近では、地方税法施行規則の一部を改正する省令(平成27年総務省令第38号)により第33号の4様式の改定がなされており、これが現行の申告書の様式となっている。
※第33号の4様式
納税者の申告義務の内容
法令等の規定から分かる通り、自動車取得税並びに自動車税及び軽自動車税の納税義務者の申告義務の内容は、自動車取得税及び自動車税については第16号の9様式に則った申告書等を都道府県知事に提出することであり、軽自動車税については第33号の4様式に則った申告書等を市町村長に提出することである。
都道府県によって異なる申告書
自動車取得税・自動車税(軽自動車税)の申告の際に使用される申請書の様式は、都道府県ごとに様式が異なり、他県様式の申請書による申告を受領しない管轄行政庁が多いという実態がある。
しかしながら、先述したように、納税義務者の申告義務の内容は、地方税法施行規則所定の様式に則った申告書を提出すれば足りるわけであるから、納税義務者には申告先都道府県が独自に作成している申告書様式に従う義務はない。
少なくとも、どこの都道府県の様式であれ、最低限、地方税法施行規則所定の様式を充足しているはずであるから、他県様式の申告書による申告であっても法令の要件に適う申告である。したがって、単に他県様式の申告書を用いていることのみをもって申告書を受領しないことは、管轄行政庁の違法行為に他ならない。
是正が望まれるローカル・ルール
都道府県ごとに独自の様式で作成した申告書を用いるよう強いる運用は、申告義務者の利便性を阻害する悪しきローカル・ルールであると認識している。税申告業務は、自動車会議所や軽自動車検査協会といった全国規模の組織が担っているにもかかわらず、なぜ統一様式の申告書を作成しないのか理解できない。申告義務者の利便性に適う運用がなされるよう改善が望まれる。