全国民の代表
民主主義に必要な話し合いの場が議会で、国のレベルでいえば国会であると先に述べました。また、民主主義において、「私たち」と「あなたたち」という区分けを作ってはいけないことも述べました。
そうすると、民主主義の話し合いの場である国会でも、「私たち」と「あなたたち」という区分けを作ってはいけないことになります。全ての議題を私たちのことと捉えて話し合うことが必要になります。
もちろん、意見の相違を議論することは必要です。議論の結果、お互いに妥協し合い結論が導かれるわけですが、民主主義の話し合いの場である国会では、この「妥協」が大事なのです。妥協こそが民主主義に不可欠である自由主義の包摂につながるからです。
議論する案件を私たちのこととして捉えていれば妥協が導きやすくなりますが、私たちにはメリットが少ないあなたたちの案件などと隔絶して捉えてしまうと妥協することが困難になってしまいます。
また、私たちの代表なのだから私たちの意見に従って行動せよとして国会に送り込んだ代表者を拘束してしまうと、他のそれぞれの地域から選出された代表者との妥協がさらに困難になってしまいます。
そこで、日本国憲法第43条第1項は「両議員は,全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」としています。これは、国会議員が、選挙された地域の代表者ではなく全国民を代表するものだとし、私たちとあなたたちという区分けをなくしているのです。そして、この条文により国会議員は地域の選挙民の意向に拘束されないと理解されています。このように、憲法は国会における妥協を導きやすくして自由主義の包摂に配慮しているといえるのです。
そうすると、自分の選挙区を潤わせることができる国会議員が良い議員であるという理屈は通らないことになります。国会は、私たちとあなたたちの戦いの場であったり、争奪合戦の場ではないのですから。