車庫証明の正しい理解(14) 保管場所が共有地の場合の承諾書の添付について
保管場所が共有地の場合、自認書の他に承諾書の添付が求められる
以前に少しだけ触れたことがあるが、保管場所が自動車保有者(以下、保有者という。)と他者との共有地である場合、警察署は、添付書類として、自認書(保管場所使用権限疎明書)及び承諾書(保管場所使用承諾証明書)の双方の提出を求めている。これは、各都道府県警察本部が警察署に通達した内容に基づいている。
法令・通達の内容
この点、法令レベルではどのように規定されているのかというと、自動車の保管場所の確保等に関する法律施行規則(以下、車庫法規則という。)第1条2項1号に「自動車の保有者が当該申請に係る場所を保管場所として使用する権原を有することを疎明する書面」を申請書に添付せよとあるのみだ。この法令レベルでいうところの使用権限疎明書面を、通達レベルで保有者の使用権限別に自認書や承諾書等に細別して、申請書に添付するよう求めているのだ。
問題点
しかし、この通達レベルの取扱いは、所有権についての法律解釈が一貫しているとは言い難く、行政手続の簡素化の潮流にも悖ることになるため、改善が求められる。
法律解釈が一貫していないとする理由(1)
なぜならば、保管場所が保有者の単独所有である場合には、自己申告に基づく自認書のみの添付で足りるのに、共有の場合には、自認書だけの添付では足りず、他の共有者の承諾書の添付を求めるからだ。同義反復の感があるので、言い換えると、法令レベルで添付が要求される使用権限疎明書として、通達レベルで保有者の単独所有の場合に自認書の添付のみで足りると定めるならば、共有の場合にも自認書の添付で足りるとしないと、法律解釈が一貫しているとは言い難いからだ。
その法律とは、民法206条(所有権の内容)及び同法249条(共有物の使用)並びに前掲の車庫法規則第1条2項1号である。
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
【民法249条】
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
法律解釈が一貫していないとする理由(2)
すなわち、単独所有者は所有物を使用する権限を有しており(民法206条)、共有者も共有物の全部について使用する権原を有している(民法249条)のであるから、使用権限があることについての疎明(車庫法規則第1条2項1号)は、両者同一の方法とすべきなのだ。単独所有の場合に「自己申告」である自認書の添付で足りるとするなら、共有の場合にも自認書の添付のみで、法令上要求される疎明のレベルは満たしているとしなければ、法律解釈が一貫しているとは言えない。民法249条には、「その持分に応じた」と規定されているではないか、持分に応じているか否かを他の共有者の承諾書を添付させることで疎明させることに合理性があるではないか、という声が聞こえてきそうである。しかし、そもそも、単独所有であるか否かが「自己申告」である自認書の添付で事足りるとする取扱いをしているのであるから、共有持分に応じているか否かについても「自己申告」である自認書の添付で事足りるとする取扱いが、3つの条文の解釈としては一貫しているのだ。
承諾書の添付は不要とすべき
ましてや、保管場所の共有の実態は、夫婦や親子の共有である場合が大多数である。かような実態であるにもかかわらず、いちいち自認書の他に承諾書を添付させるような取扱いは、行政手続の簡素化にそぐわないことはお分かりいただけることだろう。承諾書の添付は不要とすべきである。